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青空文庫作品のあらすじと感想。ときどき考察。

『黒猫』あらすじと感想 | 青空文庫で名作を読もう!

 

こんにちは。world is aozoraです。

本日は、エドガー・アラン・ポー『黒猫』という作品について、ご紹介したいと思います。

 

白猫、三毛猫、ペルシャ猫・・・・・・

猫ちゃんって、かわいいですよね。

 

でも黒猫となると、途端に話が変わってきます。

もちろん、現実世界の黒猫ちゃんたちはとっても可愛いのですが、「黒猫は魔女の使い」とか「道を横切ったら不吉」とか、縁起の良くないイメージがあるのもまた事実です。

 

この記事で紹介する『黒猫』という作品は、主人公が飼っていた一匹の大きな黒猫に関する、不思議でちょっぴり恐ろしい出来事を綴った物語です。

 

作品URLはこちら↓青空文庫のページに飛びます)

『黒猫』の基本情報

小説の基本的な情報は、こちらです。
 
タイトル
『黒猫』(原題:THE BLACK CAT
 
作者
 
翻訳者
 
読了目安時間
30分
 

あらすじ

主人公の「私」は昔、動物好きな心優しい少年だった。しかし今では酒癖が悪く、暴力的な男である。
 
ある日のこと、「私」は天邪鬼の心持 —— つまり、罪だと分かっているからこそ悪いことをしたくなるという衝動に襲われた。
 
罪の意識に苛まれ涙を流しながらも、「私」はその衝動を抑えられない。そして飼っていた一匹の猫を、木から吊るして殺してしまった。
 
その日から、「私」の身の回りでは不可解な出来事が起こり始める。
まるで殺された猫が、あの世から「私」を呪っているかのように ——
 

感想(ネタバレ注意!)

仄暗い世界観が魅力的なこの物語。
 
詳しいストーリーは小説本編を読んでいただくとして、ここからは私が『黒猫』を読んでる際に気に入った点、つまり推しポイントをいくつかピックアップしていきます。
 
盛大にネタバレを含んでいますので、未読の方はご注意ください。
 
(というよりむしろ、本編を読んでいただいてからの方が、楽しめる内容かもしれません)
 
 

推しポイント1:主人公の心情変化の振れ幅

推しポイントの一つ目は、主人公「私」の心情や行動の振れ幅が大きいことです。
 
いくつか例を挙げてみます。
 
まずは物語の序盤から。
 
ある日、可愛がっていた黒猫が自分を避けているように感じた「私」は、そのことに怒り狂います。思わず猫に暴力を振るおうとすると、猫はびっくりして「私」の手を引っ掻いてしまいました。
 
さて、このあと「私」はどんな行動を取るでしょうか?
 
多くの読者にとって、「主人公の猫に対する怒りがさらにヒートアップする」ことは予想の範疇だと思います。
 
しかしそのヒートアップ加減が尋常ではありません。
 
なんと彼は、黒猫の片目を抉り取ってしまうのです
 
いくら苛立っているとはいえ、自分が長年飼っている可愛い猫です。ちょっと避けられたからって、これは流石にやりすぎな感じがしますね。
 
 
「私」の感情の変化が予測しずらいシーンは、他にもあります。
 
飼っていた黒猫を木から吊るしてから、しばらく日が経ったころ。黒猫を殺して後悔していた「私」は、その猫とよく似た野良の黒猫を拾ってきます。
 
しかし、拾ってきた新しい黒猫も片目がないことに気づいた彼は、その猫のことも疎ましく思い始めました。猫にとっては、大変なトバッチリです。
 
こいつを殴りつけてやりたいと、何度か本気で考えた主人公。しかし、しばらくの間は、猫に危害一つ加えず、我慢することを選びます。
 
なぜだと思いますか?
 
私(この記事の筆者)は「一匹目の猫を殺してしまった罪の意識」から、猫に手をあげられないのかな、と初め予想していました。しかし読み進めてみると、どうやらメインの理由はそこではありません。
 
主人公はその黒猫のことが「ほんとうに怖かった」から殴れなかった、というのです。
 
というのも、猫の胸元にあった白い斑点が、日に日に恐ろしい模様に変化していったのが原因なのですが・・・・・・
 
私はこのシーンに強く心を惹かれました。
 
普通、このストーリー展開で、「怖かったから殴れなかった」と理由が出てくるとは予想しないじゃないですか! 
 
てっきり「罪の意識」やと思ってしまいますやん・・・・・・
 
こんなふうに、主人公は物語中で、猫に絶えず感情を揺さぶられていきます
 
その揺さぶられ方は、普通に生きていたらまず出会わないような(少なくとも「そういうことって、よくあるよね!」と共感はできないような)感情が多いです。
 
それにも関わらず、妙にリアリティーがあって、つい先が気になってしまいます。
 
 
さて、これは余談ですが、主人公と同じようにポー自身も生前は酒癖が悪かったと言われています。もしかしたら、作中に描写されている酒に酔ったときの暴力的な気持ちや、そのあとに襲ってくる後悔の気持ちは、実際に感じたことがモチーフになっているのかもしれませんね。
 

推しポイント2:この黒猫、絶対に何かあるのに・・・・・・

推しポイント2は、題名にもなっている「黒猫」についてです。
 
最初に殺された方と、後から拾ってきた方で、合計二匹の猫が登場するのですが、二匹とも不可解な点が多いです。
 
例えば、一匹目の黒猫を殺した直後、主人公の家が火事になるシーンでは、唯一焼け残った壁に、死んだ黒猫そっくりの紋様が浮かび上がり、主人公を恐怖させました。
 
また二匹目の黒猫を拾ってくるときにも、不思議な点がありました。この猫はとある酒場の中にいましたが、その店の主人に聞いてみても「そんな猫は知らない」と言われるだけ。主人のペットではなかったのに、なぜ酒場に、しかも主人公の目につきやすい場所に、わざわざ現れたのでしょうか。
 
さらにこの二匹目の猫は、飼われ始めてからも、甘えるふりをして飼い主の行動を逐一妨害していきます。私は猫を飼ったことがないので、普通の猫がどの程度飼い主さんにベッタリなのかは分かりかねますが、階段を降りているときも足元で纏わりつき、あまつさえ突き落とそうとするなんて、ただ甘えているだけではそうそう起こらないのではないでしょうか。
 
またこの猫は、とある事情から壁の中に閉じ込められて、その四日後に発見されます。しかし普通の猫って、4日間も飲まず食わずで生きられるものなのでしょうか?
 
様々な現象を総合的にみても、やはりこの黒猫、絶対何かあるに違いありません。
 
しかし、いくら読み込んでも、この猫の異常性に関する決定的な証拠は描写されていません。
 
火事のときの怪奇現象については、主人公が科学的な説明を試みていますし、そのほかの点も論理的に説明しようとすれば、できなくはないのです。
 
この「どちらともつかない曖昧な感じ」が、読了後の不気味な後味につながっているのではないでしょうか。
 

まとめ

本記事では、エドガー・アラン・ポーの『黒猫』のあらすじと感想を書かせていただきました。
 
この記事を通して、少しでも『黒猫』やポーの作品に興味を持ってくれる人がいらっしゃれば幸いです。
 
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
 
 
 
 
改めまして、作品URLはこちら↓青空文庫のページに飛びます)
 
 
 

おまけ:『黒猫』が好きな人にオススメの作品

このコーナーでは、world is aozoraの独断と偏見で、『黒猫』が好きな人が気に入りそうな作品を推薦します。
 
次に読む本に困っているそこのあなた!
騙されたと思って読んでみてください。
 

オススメ1:『黄金虫』| エドガー・アラン・ポー

『黒猫』と同じ作者が書いた、この作品。「海賊が残した宝物を探して主人公たちが冒険する」という少年漫画のようなお話ですが、後味の悪い結末も見どころの一つです。
 
『黄金虫』は、『フィラデルフィア・ダラー・ニュースペーパー』で開催されていた懸賞で最優秀作に選ばれました。賞金は100ドルだったらしいですよ💲
 
なんとも言えないエンディングが好きなあなたに、ぜひ読んでほしい一作です。
 
作品URLはこちら↓(青空文庫のページに飛びます)
 
 

オススメ2:『恐しき通夜』| 海野十三

ギョッとするようなシーンが大好きだという、そこのあなた。
ネタバレになるので深くは語りませんが、こちらの作品、オススメです。
 
海野十三さんは、日本製SF小説の先駆けとなった小説家として知られていますが、ゾワっとする程えげつないシーンがちょくちょく出てくることも、彼の作品の特徴の一つだと思います。
 
この作品、正直に白状すると、読んだあとしばらくトラウマになりそうでした。
(私がビビリなだけだったらすみません)
 
今でもふとしたときに思い出してしまう、最恐の名作です。
 
作品URLはこちら↓(青空文庫のページに飛びます)
 
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