こんにちは、world is aozoraです。
本日は『風博士』という作品を紹介していきます。
その彼が小説家として注目され始めるきっかけとなったのが、この作品だと言われています。
一体どんな作品なのか、早速チェックしていきましょう。
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作品の基本情報
タイトル:
風博士(読み方:かぜはかせ)
読了目安時間:
10分〜15分
文章の読みやすさ:★★★★☆
読者に語りかける口調で書かれた作品のため、親しみやすくて読みやすい文章になっています。
現代では使われていない漢字も登場しますが、ふりがながふってあるので安心です。
ただ、ところどころに小難しい言い回しが出てくるので、人によっては読了に少し時間がかかるかも・・・?
あらすじ
偉大なる学者・風博士が、忽然と姿を消した。
行方不明事件かと思いきや、主人公の「僕」は「風博士は自殺したのだ」と訴える。
博士が残したという遺書を手に、博士の最期を目撃したと証言する「僕」。しかし警察は彼の証言を信じていない。
それどころか、風博士と「僕」が共謀して博士の自殺を偽装し、
なぜこのような事態に陥ったのか。
そのヒントは風博士が残した遺書に書かれているようで ——
【結末まで知りたい方向け】 あらすじ続き
風博士の遺書には、蛸博士を蔑み、恨む気持ちが延々と書かれていた。
例えば、蛸博士は禿頭であるとか、
風博士が唱えた学術的新説が間違っていることを理路整然と指摘された、とか。
風博士の自宅玄関にバナナの皮を仕掛けて転ばせたのは、蛸博士に違いないとか、
禿頭のくせに風博士の妻を寝取った、とか・・・・・・・
一連の悪口が一区切りついたところで、遺書は風博士の自殺理由に言及する。
生前の風博士は、蛸博士にどうにかして恥をかかせたいと考えた。そこで蛸博士の寝室に忍び込み、カツラを盗んだ野田。しかし翌日現れた蛸博士は、予備のカツラを被っていた。
風博士は自身の作戦が失敗に終わったことがショックすぎて、自殺したというのである。
もうこの時点でツッコミどころ満載なのだが、ここでさらに「僕」は風博士が亡くなったときの状況を明かす。
なんと風博士は、風に変身して消えてしまったというのだ。だから死体も残さずに、忽然と消えてしまった、と。
・・・・・・ここで物語は終わっている。
警察と「僕」のどちらを信じるかは、あなた次第だ。
感想
ここからは『風博士』を実際に読んでみた感想を書いていきます。
盛大にネタバレを含んでいますので、未読の方はご注意ください。
(なんなら、本編を読んでいただいてからの方が、楽しめる内容かもしれません)
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先ほどの小説情報紹介パートでは、ネタバレ防止のためにシリアス風なあらすじを書きましたが、実際の本編は全然シリアスではありません。
むしろネタ系です。
遺書は悲劇でもなんでもなく、ただただ蛸博士に対する悪口が並んでいるだけでした。
しかも、悪口の内容がしょうもない!
蛸博士はハゲだと長々主張してみたり、ハゲのくせに妻を寝取りやがったと愚痴ってみたり。
作品冒頭で、語り手の「僕」が読者に向けて、「では諸君は、まず悲痛なる風博士の遺書を一読しなければなるまい」と言ってきたときには、どんな悲劇が綴られているのかとドキドキしたものですが・・・・・・
遺書を読み進めている間に「ん? 遺書というより、なんかめっちゃ悪口じゃね?」と気づき始め、
読み進めれば進めるほどにその違和感は確信に変わり、
途中からは、次はどんなチンケな中傷が書かれているのかと、読み始めた当初とは違った意味で、文章を追う目線が止まらなくなっていました。
いやあ、面白かった!
小説を読んで、笑ったのは久しぶりでした。
しかし、この小学生レベルの悪口がここまで面白く感じられたのも、冒頭のシリアス風展開があったからこそだと思います。
さすが文豪、緩急の付け方が上手い!
まとめ
本記事では、坂口安吾の『風博士』のあらすじと感想を書かせていただきました。
この記事を通して、少しでも彼の作品に興味を持ってくれる人がいらっしゃれば幸いです。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
改めまして、作品URLはこちら↓
おまけ:『風博士』が好きな人にオススメの作品
このコーナーでは、world is aozoraの独断と偏見で、『風博士』が好きな人が気に入りそうな作品を推薦します。
次に読む本に困っているそこのあなた!
騙されたと思って読んでみてください。
オススメ1:木枯の酒倉から | 坂口安吾
坂口氏の別の小説のご紹介です。
昔の作品にしては珍しく、「聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話」という愉快なサブタイトルが付いています。
タイトルが通り、酔っ払いの男が出てくるお話です。
毎年、春になると禁酒するのに、冬にはまた酒に手を伸ばしてしまう彼。「今年こそは冬も禁酒してやるぞ」と決意するのですが、果たしてうまくいくのか —— ?
『風博士』とも共通する、コミカルな文章が魅力的な一作でした。
オススメ2:阿Q正伝 | 魯迅
コミカルな作品といえば、魯迅の『阿Q正伝』もオススメ。
スーパーポジティブ野郎・阿Qが主人公のお話です。
風博士の主人公同様、言動がはちゃめちゃなところが、見ていて楽しいです。